JTTMAコラム

【JTTMA】僧帽筋の施術を解剖学でグレードアップ|触診・機能・ストレッチ ~後編~


こんにちは!JTTMAの小澤です。

前編では、セラピストがまず覚えるべきことと、僧帽筋上部の位置と機能についてお話ししました。後編では、その知識をもとにしたストレッチの考え方から始めて、僧帽筋の中部・下部の機能、自分やパートナーの身体で行う触診の方法、そして実際の施術をどうグレードアップしていくのかをお伝えしていきます。

「僧帽筋がなかなかほぐれない」と感じている方にこそ、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

 

こちらの動画を参考にしてください。

僧帽筋上部のストレッチの考え方

ストレッチとは、起始と停止を離してあげることです。

僧帽筋の上部は、外後頭隆起から鎖骨・肩峰についていて、肩甲骨の挙上、頭部の側屈、対側回旋に働く筋肉でした。ということは、

  • 首を反対側に倒す
  • 顔を同じ側に向ける
  • 肩甲骨を下げる

こういった動作をしてあげると、しっかりとストレッチがかかることがわかりますよね。機能がわかっていると、ストレッチの方向も迷わなくなります。

僧帽筋中部の位置と機能

中部は、胸椎の1番から6番についているといわれています。そして、肩甲骨の棘の部分に停止を持っています。

この位置関係から、中部の働きは肩甲骨を真ん中に集めるような動き、「肩甲骨の内転」になります。肩甲骨を寄せる動作ですね。

ですから、いい姿勢を作ろうとして肩甲骨を寄せすぎている方は、ここが張ってきます。

一方で、猫背になって肩甲骨が外側に広がりすぎ、中部が伸ばされ続けている状態でも、筋肉は元に戻ろうとして縮こまろうとするため、やはり張ってきてしまうことがあります。

そのため、僧帽筋の中部は「伸ばしてあげる」というよりも、肩甲骨を元の位置に戻してあげて、そこで圧をかけてあげることが大切になります。

僧帽筋下部の位置と機能

下部は、胸椎の7番から12番についているといわれています。そこから、肩甲棘の下縁についてきます。

今度は下から上に向かってついているので、肩甲骨を下に引っ張る「下制」という動作で使われます。肩甲骨を上に持ち上げる上部とは、ちょうど逆の働きですね。

日常生活では、姿勢を良くしようとして肩甲骨を寄せながら、さらに首を長く見せようとするような姿勢をとると、僧帽筋の下部がとても張ってきてしまいます。

覚え方のコツは「上は上げる・下は下げる・真ん中は寄せる」

上部・中部・下部と、覚えることが多くて大変だなと感じるかもしれません。そんなときは、肩甲骨の動きをこんなふうにイメージで覚えてみてください。

  • 上部は、肩甲骨を上げる
  • 下部は、肩甲骨を下げる
  • 中部は、肩甲骨を真ん中に寄せる

場所と動きをそのまま結びつけておけば、記憶の負担がぐっと減りますよね。あとは、上部の首の動きだけ追加で覚えておけばOKです。

日常生活から硬くなっている場所を見極める

ここまでの機能を、お客様の日常生活と結びつけてみましょう。

  • 「肩」が上がりすぎている方、頭を支え続けている方 → 上部が硬くなっている可能性
  • 肩甲骨を寄せすぎている方、逆に猫背で肩甲骨が広がっている方 → 中部が張っている可能性
  • 「肩」が下がりすぎている方 → 下部が硬くなっている可能性

日常生活のことを考えながら僧帽筋の勉強をしていくと、お客様の生活習慣と、必要な施術とが結びついてきます。

触診(パルペーション)で筋肉の位置を確かめよう

知識が入ったら、実際に触って確かめてみましょう。自分の身体で触れるところは自分で触り、届かないところはパートナーの方やお店の仲間がいるときに身体を借りて練習してみてください。

上部の触り方

僧帽筋の上部は後頭部からついているので、その辺りに手を当てておきます。その状態で、相手の方に肩甲骨をぐーっと持ち上げてもらいます。「肩」を上に持ち上げるような感じです。すると、硬くなる筋肉が感じられます。

それでもよくわからない場合は、上から少し抵抗をかけた状態で持ち上げてもらってください。はっきりと力が入る筋肉がわかるはずです。それが僧帽筋です。

やってみると、かなり鎖骨の外側まで力が入っていることがわかると思います。触るべき場所がどこなのか、明確になってきますよね。

中部の触り方

肩甲骨の間に手を当てておき、肩甲骨を寄せる動作をしてもらいます。一度緩めて、もう一度寄せてもらう。このとき硬くなる筋肉が僧帽筋の中部です。

なお、ここでは中部の深いところにある「菱形筋」という筋肉も一緒に使われています。

下部の触り方

下部は肩甲骨を下げることで使われます。まず一度肩甲骨を上げてもらい、胸椎の6番辺りから下の方へ集まってくるところに手を当てておきます。そのまま「下げてください」とお願いすると、硬くなる筋肉がいるのがわかります。

一度力を抜いてもらうと柔らかくなり、もう一度下げてもらうとまた硬くなる。このように、力を入れたり抜いたりしながら触っていくと、徐々に「ここだな」という位置がわかるようになってきます。

この方法を「パルペーション(触診)」といいます。ぜひ練習して、自分の中に筋肉のイメージをしっかり持っておきましょう。

僧帽筋上部への施術をグレードアップする

それでは、前編の冒頭で紹介した一般的な施術を、どのようにグレードアップしていくかをお話しします。

たわませて圧を入れやすくする

セラピストの膝の上にお客様の前腕を乗せ、僧帽筋にアプローチする施術は、確かに効果的です。肩甲骨を持ち上げて支えている間は、僧帽筋がたわみます。たわんでいるからこそ、圧がしっかり入りやすく、深いところにも届きやすいんです。

鎖骨のキワまでアプローチする

ただ、前腕だけでは、鎖骨のキワの細かい隙間まではアプローチできません。

そこで、首の付け根は前腕でほぐし、鎖骨の方は親指を入れたり、中指・薬指を置いたりしながら同じように施術してあげます。さらに頭の方にもアプローチしてあげる。そうすると、僧帽筋の隅々まで届けることができます。前編でお話しした「上部は思っている以上に前の鎖骨までついている」という知識が、ここで活きてくるわけです。

ほぐし:圧をかけながら身体で動かす

モデルさんに座っていただいて見てみると、右側の「肩」の方が高くなっていました。そこで右側を中心に施術していきます。

まずは首の付け根に、しっかりとほぐす圧をかけていきます。圧をかけるときは漸増漸減、ゆっくり入れてゆっくり抜くことが大切です。お客様から「痛い」という反応が出ないようにしてあげましょう。

圧をかけた状態でお客様の腕を動かしてあげる、という圧のかけ方もできます。鎖骨のところにも同じように圧をかけて腕を動かすと、自然と圧が入ってくるような形になります。腕を回してあげてもOKです。

このとき大切なのは、手で回すのではなく、自分の身体で回してあげること。起始と停止の骨の位置がわかっていれば、こうしたほぐし方ができるようになります。

ストレッチ:筋張りを見ながら軽く

次はストレッチです。お客様の頭を倒して、肩甲骨を下に落としていきます。フルでストレッチをかけるなら、頭を反対側に倒し、さらに対側回旋で働く筋肉なので、顔を同じ側に回してあげるとよりストレッチがかかります。その状態で、肩甲骨を下げる方向にストレッチしていきます。

ただ、このモデルさんの場合、すでに筋がピンと張って突っ張っている状態でした。ここで強く行きすぎると、お客様は痛く感じてしまいます。ですから、ここは軽めにストレッチをかけていきます。

筋張っているところは「まだまだ張っているんだな」というサインでもあります。狙っている筋肉の走行に沿って施術してあげることで、僧帽筋の硬さを緩めていくことができます。

施術の結果、最初は明らかに右側が高かったのが、右が下がった方向に変わってきていました。僧帽筋の位置と機能を理解した施術だからこそ出せる変化です。

筋肉は「グループ」で学んでいこう

セラピストとして解剖学を学ぶときは、筋肉がどこからどこについているか、どのように機能するのか。これがわかると、タイ古式マッサージのほぐしとストレッチ、触る位置に工夫ができるようになります。

ただ、勉強を始めたばかりの頃は、筋肉を一つひとつ個別に覚えていきますよね。最初はそれがとても大事です。

でも、たとえば「肩甲骨を挙上させる筋肉」は僧帽筋だけだと思いますか?

もちろん、僧帽筋だけで行っているわけではありません。他にもさまざまな筋肉が協力して、その動きを作っています。ですから最終的には、「肩甲骨を挙上させる筋肉には誰がいるんだろう」「内側に寄せる筋肉には誰がいるんだろう」と、グループ化しながら勉強していくことが大切になってきます。

まとめ

後編では、僧帽筋のストレッチの考え方から、中部・下部の機能、触診の方法、そして実際の施術のグレードアップまでをお伝えしました。

ストレッチは起始と停止を離すこと。上部であれば、首を反対側に倒し、顔を同じ側に向け、肩甲骨を下げることでしっかり伸ばせます。中部は肩甲骨を寄せる内転、下部は肩甲骨を下げる下制に働き、「上は上げる・下は下げる・真ん中は寄せる」とイメージで覚えると整理しやすくなります。中部は伸ばすよりも、肩甲骨を元の位置に戻して圧をかけてあげることがポイントでした。

そして、力を入れたり抜いたりしながら触るパルペーションで筋肉の位置を自分の手で確かめておくと、施術では前腕と指を使い分けて鎖骨のキワまで届けたり、自分の身体で動かしながら圧を入れたりと、さまざまな工夫ができるようになります。ストレッチをかけるときは、お客様の筋張りの様子を見ながら加減してあげてくださいね。

解剖学は、筋肉を一つひとつ覚えるところから始まり、やがてグループで捉えられるようになると、施術の一つひとつに意味が見えてきます。今回の内容をきっかけに、ぜひ一歩ずつ学びを深めていってください。

 


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それでは、また次回お会いしましょう。ありがとうございました!

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